「アジアで儲かる会社」に変わる30の方法。という本を読んで

非常にお世話になっている方が本を出版されました。

グローバルに事業を展開したいと思っている方は
必ずヒントになる内容が書かれていますのでお勧めです。


「アジアで儲かる会社」に変わる30の方法

「アジアで儲かる会社」に変わる30の方法

森辺さんは、ストラテジック・デシジョン・イニシアティブ株式会社(SDI)
の代表をされており
【Sankei Biz】 にも定期的にコラムを提供されています。

SDI社の事業概要を簡単にご紹介すると
中国、インド、東南アジアで事業を展開される企業の支援事業全般
主に、現地リサーチ、法人設立、営業支援、M&Aなど

僕が以前に森辺さんと話していて、なるほどと思った事の一つが
例えば、現地企業と業務提携(M&A、アライアンスなど含む)を実施する際に
そもそも向こうから、提携や売却を検討している会社と話をするのではなく

[1] まず、自分たちで現地で勝つための戦略を明確に持つ。
[2] その戦略にマッチしている提携先企業を0から探す。
[3] ピックアップできたふさわしい企業を、必死で口説く。
[4] 提携が成立する。

というプロセスを踏むべきだと言う考え方です。
これは、国内、海外問わず必要な考え方です。

どうしても、上場企業で無いとM&Aエージェントから出てくる提携先候補リストは
必ずしもいい会社ではないケースが多いです。
ex)経営者が高齢で、そろそろ売却したい。
 事業がうまく軌道に乗らないので売却したいなど

その中から、【Better】な会社を選んで
提携の話を進める。というのがよくあるプロセスです。

ただ、森辺さんの考えは
スタートから【Best】の会社探しを念頭に置いています。

【Best】の会社が見つかったら
一緒になって口説き落とすというものです。
【Better】で妥協はしない方がいいということです。



※SDI社サイトより引用


例えば、僕が中国でコールセンター事業を展開したいと思ったなら
中国にある、コールセンター会社をすべてリストアップして
一社一社調査して、【Best】だと思う会社を探し出して
その会社に能動的にアプローチをかけるという事です。



■アジアで儲かる会社に変わる30の方法


ちなみに、このblogをシェアして、
この本を宣伝して下さった方の中から抽選で
僕が自腹で買ったw10冊をプレゼントします!(送りますね)




では、この本を読んで、重要だと感じたことを何点か記載させて頂きます。




■生き残りをかけるな

まず、アジアの市場は「生き残るために出る市場ではない」という事です。
そんなに甘くはないという事です。
国内でうまく行っていない会社が
海外でうまくいく可能性は極めて低いでしょう。

どの会社も、『今、日本じゃだめだ!アジアだ!』
何て言っていますが、目の前の事業もおぼつかないのに
百年早いという戒めだととらえました。

あとは、体力(資本)のない会社は進出するべきでない。
目安としては、年商50億以上だそうです。
(ただ、勢いがあって、成長戦略が明確であるベンチャー企業は別という事です。)

そんに簡単に結果が出ません。それでも投資し続けられる体力がないと
せっかくのビジネスチャンスも、資金ショートで撤退に追い込まれます。





■現地に合わせる

森辺さんがとくに強調されている一つに
”マーケットインの発想を持つ”という事があります。

日本企業は、全世界的に見ても
この発想が極端に少ない国だと思います。


というのも、日本の基本的な固定概念として

「高品質・高技術」=「いい商品」=「売れる商品」

という方程式があると思いますし、僕もそう思っています。


ただ、海外では、この方程式では悲惨な結果を導くのです。

『日本企業の製品・サービスだから、アジアの人は欲しがるだろう。』
という発想を捨てなければいけません。


例えば、エアコンを例にすれば

「省エネ・音静か・自動洗浄」

が日本の消費者の心をつかむことはできます。

ただ、アジアでは、相手にされないと言うのです。


「省エネ」に関して言えば
日本では『夏場の設定温度は28度』みたいな感覚がありますよね。
アジアでは『22度、もしくは最低温度設定』が当たり前です。

そう言えば、海外に行けば、室内のエアコン寒すぎる。。。と日本人は感じます。

あと、こんな常識があるのです。
『空気が冷たい=空気がきれい』 なので省エネの感覚は無くなります。

さらに日本人にとって、もっと意外なのが
『音がガンガンうるさい方が、エアコンが効いているような気がする』
と感じるアジアの人々が非常に多いという事です。

日本では考えられない常識があるのです。


冷蔵庫で言えば
インドではカギ付きの冷蔵庫のニーズが高いです。

インドでは冷蔵庫は高級品です。
冷蔵庫を持っている家庭には必ずお手伝いさんがいます。

そのお手伝いさんが、冷蔵庫の中のものを盗むことも日常茶飯事なのです。

マーケットインの発想で
「カギ付き冷蔵庫」を作った韓国LGは
インドでの冷蔵庫のシェアをどんどん奪っていきました。

LGはその他にも
イスラム圏内で、一日5回、画面に「コーランが流れるテレビ』を開発し、
ヒット商品となっています。


ちなみに、サムスンでは「地域専門家制度」という制度があります。
若手社員を半年から、一年海外に派遣し、その国や地域の文化を学ばせるという制度です。

しかも、その期間一切仕事はしてはいけない。というルールです。

どっぷりその地域で生活し、現地の社会や文化に精通した人材を
とにかく密に育てることに、コストと時間を徹底してさいていいます。
これは、すごいですね。。。


日本のメーカで、ようやくマーケットインで商品販売したのが
2012年、日産がアジア新興国向けに発売した
価格50万円に抑えた「ダットサン」です。

●2012.3.12 日産「ダットサン」ブランド、印露などでは発売1年以内に2モデル

ダットサン」は日本では昭和50年代に使用していたブランドです。。。

でも今のアジアでは、高品質、高価格の商品ではなく
とにかく走れば、安くていい。
このレベルの商品が売れるという事です。

このマーケットインの発想が重要であるという事は
非常に勉強になりました。



■ローカルの企業は十分「競合」である

日本企業が海外進出する際に、先駆者のケーススタディーを学ぶのは
非常に重要な事です。

日本企業は、どの先駆者から順番に学ぼうとするかというと
まず、同じ日系企業→その次に欧米企業→韓国、台湾 などの外資系企業です。

ただ、もっとも重視して、学ばなければいけないのが
現地企業だという事です。

これは、特に新興国の場合は当てはまります。
理由は、新興国は、まだ販路・チャネルその他、流通構造、マージン構造が
未整備な場合があります。

小売りに関しては、一般的に下記の二つの方法があります。

「1.伝統的小売り」 昔ながらの家族経営、個人商店小売り
「2.近代的小売り」 コンビニ、スーパー、チェーン型の小売り

先進国では大半が「近代的小売り」ですが、
例えば、インドならまだ95%が
インドネシア、フィリピン、ベトナム、タイでも70〜90%が「伝統的小売り」なのです。

そうなると、ローカル企業から学ぶべきことはたくさんある。という事です。




■パートナーは万能ではない

上記で記載しましたが、もし【Best】な現地パートナー企業が
見つかったとしても、その企業が現地の事をすべて
パーフェクトに把握している訳はないのです。

インド人だったら、インドの事をすべて知っている
中国人だったら、中国の事をすべて知っている。という錯覚はまずいという事です。

言われてみれば、当然の事ですが、僕もこの錯覚に陥っていました。


もし、今自分が日本のビジネスの事をすべて把握しているかと
聞かれると”NO!!”でしょう。
自分の業界、自分の職種の事以外って、ほとんど知識として無いのが普通です。

それが、海外進出となれば
いいパートナーが見つかれば、あとはその会社に任せていれば何とかなる!
と勘違いをしてしまう訳です。

なので、パートナー企業に”任せる”という事ではなく
パートナー企業を”活用する”ぐらいのスタンスに変えないといけません。

こちら側で、積極的にマネジメントをする!という事です。

よく言われる、資本注入したのなら
『金を出したら、口も出せ』というヤツですね。





■本社のグローバル化

日本企業がグローバル展開に遅れをとっている
一つの理由として、”言葉の壁”というものがあります。

ちなみに、質問です。
ご自身が英語が話せず、グローバル事業を展開するとしたら
現地のトップは何人にしますか?

現地人ですか?日本人ですか?

大半の人は日本人と答えるはずです。
なぜなら、そうでないと、現地事業に関する
様々な意思決定を行うコミュニケーションが取れないからです。

もし現地人をトップとした場合
常に通訳が必要で、相当のコミュニケーションロスが発生します。

そうなると、人材獲得の大きな条件が
【日本語が話せること】となる訳です。

日本語の話せない、ローカルの優秀な人材は
採用基準を満たさない訳です。

この本では、とにかく現地化を勧めています。
ローカライズしないと、マーケットインの発想も乏しく
現地事情も分からないままのマネジメントになります。

なので、現地の人材をトップにした方がいいという事です。

よく考えてみると、P&Gもマクドナルドも
外資系企業で日本に進出してきている企業のトップは
日本人であるケースが多いですよね。

それは、外資系企業がこれを意識しているからでしょう。


日本人の英語に対する苦手意識はまだまだ根強くあります。

最近話題になった、ユニクロ楽天の社内公用語を英語にするのは
真のグローバル化の表れですね。



アジアの市場を獲得していくというのは
今後必要な考え方で、10年後にはスタンダードになっていると思います。

自分の子供たちが社会人になるころには
大手は当然、中堅企業も、海外に事業所を持っている事が多くなる時代が来るでしょう。

というか、そうなっていないと、日本の成長はありません。

以前に、サムスン副会長の李潤雨(イ・ユンウ )が世界経営者会議
『アジアの標準が、世界の標準となる。』とおっしゃっていました。

日本企業も、グローバルスタンダードをどんどん創っていくぐらいの気概をもって
成長戦略を描いていきたいですね。