フィリピン視察日記 【その2】 〜 コールセンター市場について 〜

この視察に関しては2回に分けてblogを書こうと思っています。

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 【その1】: 〜 フィリピンってどんな国 〜(お気楽な感じ)
 【その2】: 〜 フィリピンのコールセンター市場 〜
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今回のblogは【その2】です。

今回の視察ではコールセンター5社、
BPA/Pと日本語センターなど数社に訪問しました。

各まとめと、詳細のトピックスを書かせて頂きます。

■コールセンター市場について

BPA/Pにて改めて、フィリピンのコールセンター、BPO市場の
概況をレクチャー頂きました。


[コールセンター市場概況]
1.約8,000億円市場(日本では約6,000億円)世界第一の規模。
 http://nna.jp/free/news/20110411php002A.html
2.今後の拡大予測2016年で min1,2兆円 bas1,6兆円 max2兆円
 大幅な拡大見通し ※BPA/P調べ

この拡大の背景は、国策でBPOを支援していること。
米国のセンターの大半がフィリピンに移管されており、米国最大のオフショアサイトであること。


[コールセンター人材環境]
1.コールセンタースタッフの給料は高い2万〜3万ペソ(大学卒初任給約2万ペソ=4万円)
2.コールセンターは大卒必須
3.英語語学力もかなり問われる(面談後合格者は1/10)
4.コールセンターMGR、エグゼクティブクラスに活力がある。
 →日本のように日が当たらない、コストセンター。。。という感覚はまったく無く、攻めのスタンス


[フィリピン(人)の特徴]
1.英語が喋れる。高校の授業から英語なので、普通に全員話せます。
 母国語はタガログ語。現地の人に聞くと家庭では両方混ざった会話になるらしいです。
2.海外での仕事(いわゆる出稼ぎ)は一般的。人口約9,000万人の1/10は出稼ぎに出ている。
 中東、中国、日本(エンジニア、ブルーワーク、看護婦など)
3.親日である。第二次世界大戦の一時期日本統治下にありましたが、特に問題なし。
4.ホスピタリティーにあふれている。基本的に親切ですしサービス精神はあります。
5.若年人口が多い。これは前回のblogでもご紹介したとおりです。


上記のように、フィリピンは今、コールセンター産業発祥の地アメリカの仕事を
一手に引き受けています。

英語が話せて、若年層が多いこの国には、コールセンターという産業は
打ってつけであるという感じです。


イムリーにこの市場を、日本企業もチャンスととらえて動いていますね。

○2012年5月24日 NTTコミュニケーションズ
フィリピンのBPO関連サービスプロバイダーDTSIグループとの資本提携について

○2012年5月28日 TMJ
フィリピンBPO大手「PacificHub社」とサービス提携の基本合意書を締結



■コールセンターに訪問して感じたこと

1.とにかく規模がでかい

・stream社 1,3万人在籍 (米国企業。世界で3万名在籍)
・Acces社 750席 (米国企業)
・HP-philippines社 5,000名在籍 (HPのBPOセンターとしては大きな規模)
・SPI社 1,8万名在籍 
 (PLBP社というフィリピンNO.1の通信会社の子会社。日本でいうとNTTソルコ社)
・merlin社 500席 (英国企業、トランス・コスモス社10%出資) 



[SPI社 コールセンター風景(1,8万名在籍)]
果てしなくコールセンターが続き、端が見えませんでした。



[stream社 コールセンター風景(クライアントのカラーに風船をアレンジ)]



2.教育・品質管理の高さ

正直、フィリピンの市場の拡大がすごいので
そんなに教育は行き届いてないのでは?と思っていましたがとんでもない。。

教育方針や、キャリアマップは非常に明確に示されています。



日本国内の大手エージェント以上の教育、品質管理です。

例えば、SV以上にはシックス・シグマの認定をmustで取らせていたりと
管理者にはとにかく問題解決力を教育しています。



[SV席の高さを変えて見やすくしているセンター]

あと、アップセルなどのアウトバウンドは
1名につき、リアルタイムに1名のモニタリング担当がついており
極端な話、1コールが終わるごとに指導をする。といった徹底ぶり。

この業界の方ならご存知だと思いますが
一般的にモニタリングは、1か月に数時間をモニタリングして指導する。ぐらいが普通です。

毎朝1SV単位のチーム10名ほどでmtgを行い、当日の目標を共有し
業務終了後、毎日その日の振り返りを行い、改善に活かす活動が一般的。




[研修室]




[研修風景]


3.オペレーターへの福利厚生の充実

この考え方は日本と似ていますが
日本のエージェントより重視されています。

例えば、センター内に食堂があります。


リフレッシュルームや、仮眠室などが充実しています。

ちなみに、フィリピンでは、大半が米国のコールを対応しています。
アメリカとマニラの時差は大体8時間ぐらい。

なのでコールセンターには必ずロス、ニューヨーク、など
アメリカの主要都市の時計がかかっており
アメリカでは今何時なのか?を理解した電話対応を心掛けています。

今回コールセンターには日中に訪問したのでほとん席は空席です。
ほかの産業と違って、夜から業務スタートとなる場合が多いので
仮眠室やリフレッシュルームが充実しているという訳です。

なのでフィリピンでは深夜電気がついている高層ビルがたくさんあります。



■なぜここまでコールセンター運営に力をいれるのか?

これは僕の想像ですが、品質の高い企業には、どんどん米国から
仕事がふってきたり、どんどん競合からシェアを奪えるのだと思います。

そもそも、米国の仕事がフィリピンに移動してきているのは人件費のダウンが目的です。

米国のコールセンター企業は米国でコールセンターの業務をしたくないのです。
1名でも多く、フィリピンの人件費で行いたい訳です。

これは、日本国内で言うと、東京でやっているコールセンターを
人件費ダウンを目的に、沖縄や札幌に持って行きたい。というのと同じ原理です。

ただ、クオリティーも落とせないのでクオリティーの高い会社に、
片っ端から米国の仕事をふりたい訳だと思います。

だから、フィリピンの会社はクオリティーを高めれば
どんどん売上向上を叶えられるのです。

ちなみに、アメリカ人がコールセンターに電話を掛ける際
『この電話はフィリピンでフィリピン人が対応している』
というのは誰もが分かっている周知の事実です。
むしろ、『インドなまりより、ましだね』の感覚です(笑)


そうなると当然競争は激しいので上記のような施策を行う訳です。


競合も濫立しています。
訪問した一社では、同じビルに競合のコールセンター企業が
14社入っていると言っていました。14社ですよ!

日本で一つのビルに
ベルシステム、もしもしホットライン、トランス・コスモス、TMJ。。。が入っている
なんて考えられないですよね。



[訪問先のビル風景]


しかも、敵はフィリピンだけではありません。
全世界の英語が話せる国すべてです。

ちなみに、それを象徴する面白い話も聞けました。これがまたおもしろい。
とあるコールセンターでは、その業務のクライアントが
毎月どこの会社の、どこのサイトのセンターが成績一番だったかの
掲示をすべての競合に義務付けているところがありました。

これは一例ですが


ジョージア州ニューヨーク州と書いてあります。
その他に、ブラジル、インド、フィリピンでもセブ市などが記載
されていたりして、本当に全世界を舞台に戦っている。という感覚を
ヒシヒシと感じました。非常に刺激的です。


■最後に、日本との違いは?

1.競争に対する温度感

今回の視察で感じたことは
日本のコールセンター会社の競争はぬるい。という事です。

日本のクライアントによっては、複数会社に競わせたりしていますが
もちろん日本国内企業だけですし
なんとなく、これぐらいのクオリティーだよね。と
そんなに競争が激しく、切磋琢磨しているというのは感じません。

まさに井の中の蛙ですね。

考えてみて下さい。

英語圏は非常に広いエリアです。
米国、英国、インド、フィリピン、ブラジルなどあらゆる国の、あらゆる会社が戦える市場です。

それは、競争は激しくなると思います。


ちなみに、僕たちは約8名ほどで行動していましたが、コールセンターには
その来客者と、プレゼンテーターがスクリーンを見ながらディスカッションできる
プレゼンルームが必ずあります。
(いわゆる、外資系企業に訪問したら必ずありそうな、カッコいい部屋ですよ)


あとは、来訪者をもてなす、広報担当が必ず専用にいますし
ケータリングサービス的なものが必ず振る舞われています。



コーヒー、ドリンク、クッキー、軽食など

これは何を表現しているかというと、どんどん仕事をもらうために
クライアントをお招きして、自社センターの強みをプレゼンして
センターを見学してもらって、もてなす。
という営業活動がどこのセンターも盛んだ。ということです。

貪欲に全世界の仕事を取りに行くということでしょう。



2.エネルギー
エグゼクティブやMGRクラスが教育方法や
いろいろな差別化ポイントをプレゼンしてくれる訳ですが
とにかく勢いがあるし、前向きだし、積極的です。

フィリピンのコールセンターのマネジメントをしている人は
当然エリートで恐らく、稼ぎもいいでしょう。

それでいて、フィリピン国を動かしている産業(GDPの約3%)なので
圧倒的な自信を持っています。

コールセンター長というより
営業本部長や事業部長が、ガンガン現場をリードしているという感覚を感じます。
それと比較すると、日本のコールセンターのMGR層は正直あまり元気ではありません。

この辺は非常に大きな差を感じました。

このように、フィリピンに視察に行き、同じコールセンター業界だとは思えない
圧倒的な差を感じました。

なんだかうらやましいと思うのと、日本のセンター関係者も
この市場を体感してほしいと思います。



非常に大きなチャンスと気づきを得られた視察でした。


※ご参考に2013年アメリカのコールセンター市場に関する視察のblogはこちら