これからのモノ作りを、コールセンターの観点から


先日の日経新聞の一面に「日本が31年ぶりに貿易赤字
というショッキングな記事が出ていました。

その理由としては
東日本大震災による輸出低迷
原発事故に伴う燃料輸入の急増などの特殊要因
・歴史的な円高や海外経済の下振れ

などいろいろな要因が重なりあっています。

『何とか挽回したい。』
と多くの日本人が嘆き、奮起したいと思います。


貿易赤字の理由の中には
日本のメーカーが苦戦を強いられている。。。というのもあると思います。
これは、特殊要因というよりは、モノ作り大国の継続的な課題です。


サムスン時価総額が約161兆5000億ウォン(約11兆円)と、
日本最大のトヨタ時価総額(約8兆5000億円)を引き離しました。


野村総合研究所のレポートによれば、
ベトナムでは若い世代を中心に日本ブランド離れが起きているという。

35歳以上の世代では、日本ブランドは高品質という良いイメージを保っているが、
10代、20代では、日本ブランドはデザインも悪く、古くさいというイメージが広がっている。

逆に、韓国ブランドはデザインなどが評価され、価格面でも支持されている。

高品質ではあるが高価格な日本ブランドは、比較的安価だが品質も向上し、
デザインなども改良されている韓国ブランドなどに追い上げられているのが実態だ。

東南アジアだけでなく、インド、中南米などでも、価格面での優位を生かして、
韓国ブランドは中級ブランドとしての地位を固めつつある。


今までは、生産性や品質というものが重視されていました。
ただ、”次の何か”が必要な時代になってきています。

トヨタ生産方式の”かんばん方式”や”カイゼン”と言ったものは
グローバルメーカーにはもはや標準装備とされています。

と少しマクロ的な話題になりましたが
今後の日本メーカーが内需拡大、ひいては今後のグローバル展開に際しても
必要なことを、コールセンター事業を通じて感じていることを記載します。




■60歳以上からの電話が60%

あるグローバルメーカーの調査によると
デジタル家電、とくにAV系のコールセンターにかかってくる
お問い合わせの60%以上が60歳以上の高齢者だというデーターがあります。

それは、『使えなくなった』とか『トラブルが起きた』
というような故障相談ではなく
『使い方が分からない。。。』というような、不具合相談の電話です。


デジタル家電は便利だと感じる反面
ボタンが多すぎたり、操作が複雑だったりと分かりづらいことが多いです。

僕ですら、自分の家にあるデジタル家電を使いこなせているとは到底思えません。

日本では、2020年には60歳以上の人口が
1/3を占める時代がもう目の前に来ています。

デジタル化が進む一方で、ITリテラシーの低い高齢者がどんどん増えてきます。

ようは、性能よりも、分かりやすさが問われると言う事です。

メーカーは、誰を対象に、どんな商品を作るべきか?
真剣に考える必要があります。




■コールセンターがメーカーを変える

今コールセンターではVOC活動が活発です。

上記のような、今後のお客様ニーズを
一番的確に捉えることができるのは紛れも無くコールセンターです。


あるお客様からこんな電話があります。

お客様: 
 「冷蔵庫にボタンがたくさんあるんだけど、どんな使い方ができるの??」

コミュニケーター: 
 「一番上のボタンは○○という機能、二番目は○○、三番目は○○。。。」

お客様:
 「。。。。」


このコミュニケーターの対応は決して間違えていません。
ただ、このお客様は、機能を聞きたいのではなく
冷蔵庫に、こんなにたくさんボタンがある事への”違和感”を訴えたいのです。

そんな電話がたくさん入ってきます。

そんな時にコミュニケーターが
機能を伝えるだけでなく、その違和感に気づき
お客様としっかり対話し、今後の商品開発に活かす事が
本当に必要になってきます。

・そんなに機能はたくさん必要なのか?
・ボタンはどこに、どんな風に、いくつぐらいなら分かりやすいのか?


このようなコール内容を、的確に商品開発に伝達し
その情報を真摯に受け止めて、商品開発に活かすというサイクルが必要です。


どうしてもメーカーは技術者が中心でモノが作られていきます。
最近は、このような状況を打破するために、
技術者に電話をモニタリングさせるというメーカーも増えています。

非常にすばらしい取り組みです。


今までメーカーのバリューチェーン
部品調達から、いろいろなプロセスがあり
 → 生産 → 販売 と販売で終わっています。

これからのメーカーには、販売の”後”の工程がむしろ重要になってくると思います。

その工程を担うのが、コールセンターだったり、アフターケアだったりします。





■今後のメーカーが勝つには

このように、販売の後の工程を重視し
お客様の声を商品開発に活かすサイクルをしっかり回すことができれば
分かりやすい商品がどんどん出来上がってきます。

2020年に日本では1/3が60歳以上になります。
ただ、これは、日本でけではありません。

今後中国も、その他先進国でも高齢化は進んでいきます。

今、日本でこのサイクルを作って成功すれば
今後のグローバル展開でのパッケージ化が進み、競争優位に立てるはずです。

コールセンターの責任者は
コミュニケーターに、この観点を持ってオペレーションするように
教育していきましょう。

「コールセンター」が「コストセンター」ではなく
イノベーションセンター」であるべきだと僕は思っています。